Trilok Gurtu / Spellbound

2013/05/16(木) 11:52:40 新譜 THEME:JAZZ (ジャンル : 音楽 EDIT
Trilok Gurtu / Spellbound

Don Cherry(Poket-Tp?)1, Hasan Gozetlik(Tp)2, Nils Petter Molvaer(Tp)3,9, Ibrahim Maalouf(Tp)4,8, Paolo Fresu(Tp, Effects)5,11, Matthias Schriefl(Tp)6, Matthias Hofs(Tp, Doublebell-Tp)7,10 Ambrose Akinmusire(Tp)10
Trilok Gurtu(Ds, Per, Tumbura, Tabla, Vo, Additional-Key)
Tulug Tirpan(Key)
Jonathan Cuniado(B)
Nitin Shankar(Additional-Per)2,6, Carlo Cantini(Additional-Key)3, Helene Traub(English Hoan)7, Jokob Janeschitz-Kreigel(Cello)7
Rec. September-December 2012, Turkey, France, Norway, Germany, Italy, California
(Moosicus Records M1206)

前作「Trilok Gurtu with Simon Phillips + NDR Bigband / 21 Spices(11年、別頁あり)」が最高にカッコよかったトリロク・グルトゥだけど、本作ではまた趣向を変えて、曲ごとにドン・チェリー(アメリカ)、ハサン・ゴゼットリク(?、トルコ)、ニルス・ペッター・モルヴェル(ノルウェー)、イブラヒム・マーロフ(レバノン、フランス在住)、パオロ・フレス(イタリア)、マティアス・シュリーフル(ドイツ)、マティアス・ヘフス(ドイツ)、アンブローズ・アーキンムシーレイ(アメリカ)の8人のトランぺッターと共演しているのが興味深い。他の共演者はいずれも知らない人ばかりだが、バンドの核となっているトゥルグ・ティルパン(?)はトルコ、ジョナサン・クニャード(?)はスペイン出身のようだ。ニティン・シャンカール(?)は、「Trilok Gurtu/Massical(09年、別頁あり)」にも参加しているのが自ブログで見つかった。

グルトゥ曲が7曲(うち2曲はチェリーとの共作)、ガレスピーの「Manteca」、マイルスの「Jack Johnson / Bkack Stain」「All Blues」、チェリーの「Universal Mother」で全11曲。最後に「Thank You by Don Cherry」と題した、おそらくチェリーがThank you very muchとしゃべっているトラックが付け加えられている。
ドン・チェリーとデュオっている1曲目は、彼が亡くなる1995年以前の演奏ということになると思うけど、何かの曲のイントロ的な部分と見えて、ほんの30秒ばかりで終わってしまうのが残念ではあるも、それに2曲目の「Manteca」がスムーズに繋がっているのはいい塩梅。この曲ではWRを連想させるようなサウンドの中、ハサン・ゴゼットリクがトルコ的な色合いを醸し出しながら吹いているけれど、曲調には意外とよくマッチしていて、特にサビの部分は元々トルコ民謡の音階的なものを用いていたのではと錯覚してしまうほどにバッチリ嵌っているね。ゴゼットリクの吹き方は弱々しい感じであまり好きではないものの、楽曲のアレンジとしてはなかなか面白い。3曲目「Jack Johnson / Bkack Stain」は、エレクトリック・マイルスの流れを汲むニルス・ペッター・モルヴェルが参加しているだけあって、いかにもといった感じの演奏が繰り広げられている。でも前半の「In A Silent Way」的な静かな部分はトランペットとタブラの絡みが絶妙ではあるも、中盤からのドラムスも加わった躍動的なリズムの部分は、グルトゥが叩いているわりには単調な気がしないでもない。まあモルヴェルが演奏する場合はいつも大体こんな感じで、大きな山場を作ることもなくクールに終わってしまうので致し方ないだろう。オリジナルの4曲目は中東色の強いフュージョンといった感じで、ご丁寧にも爽やか(?)なヴォーカルというかコーラスまで入っている。楽曲自体はそんなに悪くはないけれど、イブラヒム・マーロフのトランペットはモルヴェル的であまり好きではない。それと比べると、同じくフュージョン的な5曲目でのパオロ・フレスは、曲調に合わせてシンプルに吹いていながらも力強さが感じられるし、ミュートの他にオープン・トランペットもオーバーダブして、メロディーを一人ユニゾンしているのもグッド。この曲ではグルトゥの口タブラ(Konnakol)もちょっとだけだが楽しめる。6曲目のマティアス・シュリーフルはこれまたモルヴェル風ではあるものの、リズム乗りのいいプレイが、特に倍テンになってからの部分で活きているので、これはこれでいい感じで楽しむことができる。7曲目はイングリッシュホルンとチェロも加わった穏やかな曲調。この曲で吹いているマティアス・ヘフスは正確無比な細かいフレーズで聴かせてくれるけど、その奏法はジャズというよりもクラシックに近いものがあるし、クレジットをよく見ると譜面に書き込まれたアドリブを吹いているようなので、普段はそっち方面で活躍している人なのだろう。8曲目はまたマーロフ。イントロ部分で思いっきりコーラン的なフレーズを吹いているけれど、こういう微妙な音階を吹けるのはやはり出身国が関係しているのかもしれない。そう思いながら聴くと、インテンポになってからのトランペットもそれなりによく感じる。9曲目はモルヴェル。リズミカルな楽曲自体が悪くないし、トランペットに接続しているシンセ(かな?)も効果的で、3曲目の中盤以降よりこちらの方に面白みを感じるけど、それにはリーダーのグルトゥの見せ場がほとんどないのに加えて、どのトランぺッターも似たようなフィーリングで吹いている起伏の少ない楽曲群に、ここまで聴いてようやく馴染んできたことも関係している。10曲目は「All Blues」。この曲でのアーキンムシーレイはいつもの調子でいい感じで吹いているし、ヘフスもまたクラシック調ではありながらもなかなかのアドリブ(といってもこれも譜面どおり吹いているだけだが)で聴かせてくれる。後半にはグルトゥの、タブラとドラムスのちょっとした一人バトルもあるし、基本的に4ビートでやっていることもあって、これまでの曲の中では一番しっくりくる。またラストの11曲目もフレスがいい感じに吹いているし、グルトゥの口タブラ部分のアンサンブルもバッチリ決まっているね。
ラストの2曲のように、グルトゥが活躍している場面がもっと多ければ、またトランぺッターだけではなく、けっこうなやり手と思われるティルバンとクニャードにもスポットが当たっていれば、たとえ似たような感じの曲調ばかりが続いていたとしても退屈せずに楽しめたのではと思う。グルトゥのアルバムは、前作の「Trilok Gurtu with Simon Phillips + NDR Bigband / 21 Spices」は別格として、それよりも前の「Trilok Gurtu,Arke String Quartet/Arkeology(07年、別頁あり)」はまあまあ、「Trilok Gurtu/Massical(09年)」はイマイチと、企画としては毎回面白いことをやっているものの、演奏に関しては当たり外れが多い。

評価☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)

2013年5月15日の注文

(HMV)
1.Steve Swallow / In The Woodwork
2.Lage Lund / Owl Trio
3.John Nazarenko / Darn That Dream
(Amazon)
4.Willie Jones III / Plays the Max Roach Songbook

JD Allen / Grace

2013/05/14(火) 11:50:17 新譜 THEME:JAZZ (ジャンル : 音楽 EDIT
JD Allen / Grace

JD Allen(Ts)
Eldar Djangirov(P)
Dezron Douglas(B)
Jonathan Barber(Ds)
Rec. February 20, 2012, NJ
(Savant SCD2130)

「JD Allen / I Am I Am(08年)」「J.D. Allen Trio/Shine!(09年、別頁あり)」「JD Allen Trio / Victory!(11年、別頁あり)」「JD Allen Trio / The Matador and the Bull(12年、別頁あり)」と、執拗にサックス・トリオ作品が続いていたJDアレンだが、そろそろそういう形態にも飽きたのか、本作にはピアニストとしてエルダー・ジャンギロフが参加しているのが興味深い。エルダーは一昨日聴いたばかりの「Eldar Djangirov Trio / Breakthrough」も滅茶苦茶凄かったけど、これまでは自分のバンドで弾いているのしか聴いたことがなかったので、はたしてサイド参加のときはどのようなプレイをしているのか楽しみだね。また他のメンバーもグレッグ・オーガスト、ルディ・ロイストンから、デズロン・ダグラス、ジョナサン・バーバーに代わっているけれど、ダグラスは説明不要として、これが初聴きのバーバーは本人のサイトが見つかったので、後で目を通しておくとしよう。

全11曲がアレンのオリジナル。
想像していたのとは異なり、サックス・トリオのときよりもさらにフリー指向が強くなっているのが意表を突く。基本的にノンテンポによる自由度の高い演奏は、後期コルトレーン・カルテットあたりとも共通すると思うのだが、各人のプレイが有機的に絡み合っているというわけではなく、またバンドとして全員が一丸となって熱い塊で迫ってくるといったわけでもないので(演奏自体はかなりクール、というか醒めている)、面白みがあまり感じられない。似たような感じのダークな曲調で統一しているのも、即興的な要素の強い演奏なのでこれ以上の変化は望めのないかもしれないけど、聴いているうちに退屈してくるね。そんな中エルダーがどのようなプレイをしているのか気になるところだと思うけど、本人にしてみるとこの手の演奏は新たな方向性を探るための挑戦だったのかもしれないが、実際は自分のバンドのときの十分の一も弾けていないし(左手のブロックコードもなかなか挟み込めないでいる)、周囲の状況を把握しきれずに弾いている様が不安げにも感じられるので、やはりどれだけ才能のある人でも音楽的な得手不得手があるんだなあと感じてしまう。もしこれがジェイソン・モランあたりだと、もっと魅力的なプレイをしていただろうね。それとフリー基調においてのバーバーのインテンポな4ビート・ドラミングにはそれなりに好感が持てるとしても、ダグラスのベースとの調和が取れていなくて、リズムがバラバラに感じてしまうのも気になるところ。これはテンポ出ししているドラムスがいきなりテンポを変えるわけにはいかないので、責任はむしろダグラスの方にあると思うけど、ドラムスのタイミングに合わせるでもなく、かといってサックスやピアノのフレーズの方に絡んでいるわけでもない中途半端なベースを弾いているので、やはりダグラスにとってもこの手の演奏は不得手ということなのかもしれない。アレンだけはいつもと変わらないプレイをしているけれど、バンドとしての演奏には常に散漫な印象が付き纏ってしまい、比較的にいい感じで楽しめるのはテンポがしっかりしている6曲目、同じくテンポがしっかりしていてベースもあたりまえにウォーキングを刻んでいる7曲目、テンポに加えてメロディーもしっかりしているバラード調の10曲目だけという少なさなので、これでは満足できるはずがない。ほとんどの曲が尻切れトンボで終わっているのも、イマイチ感を増長させる要因となっている。
ということで私としてはサックス・トリオ作品の方が好き。メンバー的にもオーガスト、ロイストンの方がアレンとの相性はいいのではと思う。

評価☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)

Eldar Djangirov Trio / Breakthrough

2013/05/12(日) 12:04:43 新譜 THEME:JAZZ (ジャンル : 音楽 EDIT
Eldar Djangirov Trio / Breakthrough

Eldar Djangirov(P)
Armando Gola(El-B, Ac-B)
Ludwig Afonso(Ds)
Chris Potter(Ts)3
Joe Locke(Vib)10
Rec. September 28-29, 2012, NY
(Motema Music MTM115)

アルメニア出身のティグラン・ハマシアン(1987年生まれ)やグルジア出身のベカ・ゴチアシュヴィリ(1996年生まれ)のように、近年は旧ソ連の若手ピアニストの台頭が目立っているのだが、その口火を切ったのがキルギス共和国出身のエルダー・ジャンギロフ(1987年生まれ)といってもいいだろう。2005年にリリースされた3枚目のリーダー作「Eldar Djangirov/Eldar」で初めて彼のプレイを耳にしたときは、異様なまでの指の速さに驚かされたものだ。その後は「Eldar/Daily Living(Live at The Blue Note)(06年)」「Eldar/Re-Imagination(07年)」「Eldar/Virtue(09年)」(各別頁あり)がリリースされているけれど、本作はその中の最高傑作「Virtue」と同じメンバーのアルマンド・ゴラ、ルドヴィグ・アフォンソとのトリオなので大いに期待している。「Virtue」にはジョシュア・レッドマン、ニコラス・ペイトン等がゲスト参加していたけれど、こちらにもクリス・ポッターとジョー・ロックが1曲ずつ参加しているのにもそそられるね。今回からジャケットに名前をフルネーム表示しているのは、レコード会社が変わって心機一転という気持ちの表れなのかもしれない。

エルダー曲が6曲、レディオヘッドの「Morning Bell」、スタンダード系の「Somebody Loves Me」「What'll I Do」「No Moon At All」「Good Morning Heartache」で全11曲。
1曲目から高速の7拍子でガツンといっていて、しかも途中からは4ビートへとチェンジしているのだから嬉しくなってしまう。かつてのチック・コリアのアコースティック・バンドを彷彿とさせる、メンバー各人の能力が最大限に発揮されている演奏には早くもノックアウト。例によって速弾きを駆使しながら容赦なく弾きまくっているエルダーはもちろん、アンソニー・ジャクソンとジョン・パティトゥッチを足して2で割ったような感じのゴラのエレベも、デイヴ・ウェックルの影響が感じられるアフォンソのドラミングも聴き応えがたっぷりで、もうこの1曲だけでも買ったよかったという気になってしまう。またそういうイケイケな演奏だけではなく、2曲目のような優しい感じの曲調を用意しているのもいい塩梅。優しいといっても演奏自体はとてもリズミカルで、1曲目と同様の7拍子での小刻みなビートが心地いい。そして3曲目にはポッターが登場。最初の部分の5拍子以外は、いったい何拍子でやっているのか分からないほど拍子がコロコロと変化する曲調(かなりの難曲)の中、何の違和感もなくトリオに溶け込みながら、しかも相変わらずのアグレッシブなプレイで聴かせてくれるポッターがさすが。またそれ以上に凄まじいプレイをしているトリオの3人にも圧倒される。かと思うと4曲目はしっとりとした4ビートのバラードだったりして、勢いのあるテクニカルな演奏でその上手さを見せつけるだけではなく、こういう一休みできるような曲をちゃんと用意しているのにも好感が持てる。純粋な4ビート曲の6、7曲目でゴラはウッドを弾いているけれど、これがまたエレベと比べても遜色ないプレイをしているし、10曲目に参加しているロックもいい感じのプレイで楽しませてくれるね。この曲でのエルダーの、コリアへの傾倒ぶりもいい意味で微笑ましい。
それ以外の曲は割愛するけれど、どのような曲調のものであってもノリノリで楽しめるし(曲によっては手に汗握る興奮が味わえる)、非4ビートと4ビート曲の割合や、動と静のバランスも良好。今回はシンセ等を用いずに、アコピだけに統一したのも正解だね。また録音も全体的に音が軽めではあるものの悪くはない。ただし私が買ったCDが不良品なのか、あるいはトータルで73分も収録されている弊害なのか、6曲目のベースソロが終わってからの数か所で音がループしてしまい、先に進まなくなるのには参ってしまった。そんな欠点はあるものの(パソコンでは問題なくかかるということは、CDプレーヤーとの相性が悪いということか)、これだけ素晴らしい演奏をしているのだから、当然ながらの5つ星。エルダーは17~18歳で吹き込んだ「Eldar Djangirov/Eldar」の頃と比べると、とてつもない化け物に進化している。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)

Dayna Stephens / That Nepenthetic Place

2013/05/10(金) 11:48:17 新譜 THEME:JAZZ (ジャンル : 音楽 EDIT
Dayna Stephens / That Nepenthetic Place

Dayna Stephens(Ts)
Taylor Eigsti(P)
Joe Sanders(B)
Justin Brown(Ds)
Ambrose Akinmusire(Tp)1-3,7-10
Jaleel Shaw(As)1-3,9,10
Grehchen Parlato(Vo)6,7
Rec. January 21, 2010, NY
(Sunnyside SSC1306)

デイナ・スティーブンスのリーダー・アルバムは、「Dayna Stephens feat.J Scofield/The Timeless Now(07年、別頁あり)」「Dayna Stephens / Today is Tomorrow(12年、別頁あり)」に次いで本作が3枚目だと思うけど、時系列では2011年10月録音の「Today is Tomorrow」よりも、本レコーディングの方が2年近くも前なのにクレジットを見てから気がついた。なのでスティーブンスの最新の演奏というわけではないのだが、テイラー・アイグスティ、ジョー・サンダース、ジャスティン・ブラウン、アンブローズ・アーキンムシーレイ、ジャリール・ショウ、グレッチェン・パーラトと美味しいどころが揃っているので、これでよしとしよう。ちなみにその中のアイグスティとは「Today is Tomorrow」の他にも、「Taylor Eigsti/Let it Come to You(08年、別頁あり)」で共演。またサンダース、ブラウンのリズム隊コンビとは、先日聴いたばかりの「Gerald Clayton / Life Forum(13年、別頁あり)」でも共演している。

スティーブンス曲が8曲と、スタンダードの「But Beautiful」、コルトレーンの「Impressions」で全10曲。
基本的には3管編成によるハードバピッシュな演奏ではあるも、全篇に漂っているモーダルな匂いがなんともたまらない。この辺は「Today is Tomorrow」とも共通するのだが、メンバーの人選が関係しているのか、こちらの方がよりダークかつ黒っぽく感じられる。スティーブンスのテナーは、ジョー・ヘンダーソンとウェイン・ショーターを足して2で割ったような感じとでもいえば分かりやすいかな。「Impressions」をやっていることからも分かるとおり、コルトレーン的なものも消化吸収しているけれど、間合いの取り方はショーターに、またモーダルな奏法に加えてちょっとくすんだようなテナーの音色はヘンダーソンによく似ているね。そんなスティーブンスの、いい意味で抑制の効いたプレイが一番の聴きどころなのだが(5曲目ではサックスにエフェクターをかましたりしてナウい一面も見せている)、女房役を務めているアイグスティがまた実にいい仕事をしていて、自分のアルバムのときとは一味違ったダーク臭を漂わせながら曲調にバッチリ嵌ったプレイをしているのには著しい成長を感じる。クレジットには載っていないけど、7曲目でのエレピの効果的な使い方や、8曲目から9曲目「Impressions」の繋ぎの部分で、ピアノの弦に紙か何かを挟みながら(だと思う)琴のように弾いているアイデアもグッドだね。またアーキンムシーレイの決して教科書的ではない人間味たっぷりのプレイも魅力的だし、見せ場は少ないものの常に重量感のあるビートを送り続けているサンダースにも好感が持てるし、周囲の状況に素早く反応しながらアグレッシブに攻めているブラウンも滅茶苦茶カッコいいし(エリック・ハーランドにも匹敵するほど)、2曲に参加しているパーラトの、特にバラード曲の6曲目での耳元で囁かれるような歌声にもゾクゾクする。ショウだけは「Impressions」以外の曲はテーマしか吹いていないので存在感が薄いけど、彼が普段の調子で吹きまくるとスティーブンスが目立たなくなってしまう恐れもあるので致し方ないだろう。
演奏はどの曲もいい感じだし、アルバムとしての動と静のバランスも良好。マイク・マルシアーノ担当の録音も、各楽器が温かい音色で録れていながらも骨格がガッチリとしていて上々だね。これで絶好調に叩いているブラウンのドラムソロが用意されていれば、さらに本演奏の魅力が増していたのではと思う。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)